第5回報告 アホウドリ繁殖状況

第109回(2012年12月期)鳥島アホウドリの繁殖状況
鳥島集団の繁殖つがい数は合計538組に、北西斜面の新コロニーでは122組が産卵。

■テキスト&写真:長谷川博(OWS会長・東邦大学理学部)

2012年11月25日から12月18日まで、鳥島でアホウドリの産卵状況のモニタリング調査を行ないました。その結果を下表にまとめました。

【表】鳥島アホウドリ集団の産卵状況 繁殖つがい数、カウント数を示す
 
従来コロニー
新コロニー
鳥島全体
燕崎斜面
燕崎崖上
北西斜面
繁殖つがい数(組)
412
4
122
538
昨年比
+9
-3
+20
+26
増減率
+2.2%
-42.9%
+19.6%
+5.1%

カウント数(羽) 平均

665.8
21.4
234.8
924.9
昨年比
+64.2
+11.2
+41.5
+106.5
増減率
+10.7%
+109.8%
+21.5%
+13.0%

鳥島全体で、繁殖つがい数は538組で、昨シーズンから26組、5.1%の増加でした。とくに、デコイと音声装置を利用して形成した北西斜面の新コロニーでは122組が産卵し、昨シーズンより20組、約20%も増加しました。一方、燕崎斜面の従来コロニーでは、つがい数は412組で、昨シーズンからわずか9組、2%の増加でした。燕崎崖上の平坦地に2004年産卵期から自然に形成された新コロニーでは、最近4年間に6、7、6、7組と1組の増減がみられただけでしたが、今シーズンは3組も減少しました。この場所の植生はごく疎らで貧弱なため、交尾期・産卵期直前にあたる10月半ばに鳥島に接近した台風22号(10月17日、中心気圧996hPa、最大風速25m/s)と21号(10月19日、994hPa、25m/s)の影響を強く受けたのではないかと推測されます。

鳥島全体でのカウントした個体数は平均924.9羽で、昨シーズンより106.5羽も増え、増加率は13.0%でした。それぞれの区域でカウントした平均の個体数は、燕崎斜面で665.8羽(昨年比+10.7%)、北西斜面234.8羽(+21.5%)でした。燕崎崖上では繁殖つがい数が減少したものの、カウント数は21.4羽で、昨シーズンのおよそ2倍でした。したがって、来シーズンには繁殖つがい数は以前の水準を回復するにちがいありません。

▲従来コロニー・燕崎斜面の様子

▲新コロニー・北西斜面の様子

繁殖状況の評価

鳥島全体での繁殖つがい数は、昨シーズンの予測(550〜560組)より10組以上少ない、538組でした。この原因の一つは、交尾期と産卵期直前の10月中旬に、相次いで鳥島に接近した台風21、22号でしょう。おそらく、吹き荒れる強風によって交尾行動が妨害され、交尾後に営巣地に残って営巣なわばりを守っていた雄は突風や砂嵐などの影響を受けたにちがいありません(とくに燕崎斜面とその崖上のコロニーで)。また、交尾後に海に出て卵を形成していた雌は荒れる海で十分な食物を確保できなかったかもしれません。

しかし、営巣地で観察された個体数は、昨シーズンより約100羽、10%以上も増加しました。したがって、鳥島集団の成長が鈍っているのでは決してなく、繁殖つがい数が予測を下回ったのは一時的なもので、来シーズンには以前に予測された約590組が産卵するにちがいありません。

今シーズン、鳥島全体での最大カウントは982羽でした。約1,000羽を観察できるほどに、鳥島集団の個体数が回復したのです。この調査を始めた1976-77年繁殖期の観察数は71羽でしたから、この増加はほんとうに夢のようです。

▲求愛ダンスをする若鳥

今後の予想

もし順調に行けば、鳥島全体での繁殖成功率を約70%と見積もって、2013年5月に370〜380羽のひなが巣立つと期待されます。
また、各区域での今後の繁殖つがい数を予想すると、

  • 1)飽和状態に近づいている燕崎斜面の従来コロニーでは、今後の増加はあまり望めず、繁殖つがい数は約500組で頭打ちになる。
  • 2)植生が貧弱な燕崎崖上の新コロニーでは、営巣に適した場所が少ないので、繁殖つがい数は10組以下にとどまる。
  • 3)空間的制約がない北西斜面の新コロニーでは、従来コロニーから巣立った若い個体の移入により、急速に成長する。

今後も鳥島集団のモニタリング調査を継続し、この予想を確認したいと思っています。

▲海上の群れの様子


長谷川博
OWS会長
東邦大学名誉教授
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