第9回報告 オキノタユウの繁殖状況

第116回(2014年12月)鳥島オキノタユウ調査報告
鳥島集団の繁殖つがい数は全体で合計681組に、
北西斜面の新コロニーでは183組が産卵
■テキスト&写真:長谷川博(OWS会長・東邦大学名誉教授)

2014年11月20日から12月12日まで、伊豆諸島鳥島でオキノタユウ(=アホウドリ)の産卵状況を調査しました。その結果を下表にまとめました。

【表】2014年12月の産卵状況 繁殖つがい数、カウント数を示す
 
従来コロニー
新コロニー
鳥島全体
燕崎斜面
燕崎崖上
北西斜面
繁殖つがい数(組)
488
10
183
681
昨年比
+38
-1
+35
+72
増減率
+8.4%
-9.1%
+23.6%
+11.8%

カウント数(羽) 平均

723.3
31.0
318.7
1081.6
昨年比
+36.9
+5.7
+51.3
+101.9
増減率
+5.4%
+22.5%
+19.2%
+10.4%

鳥島全体の繁殖つがい数は681組で、昨シーズンより72組、12%も増加しました。燕崎斜面の従来コロニー(写真1、2)では488組で、昨シーズンから38組、8%の増加、デコイと音声装置を利用して形成した北西斜面の新コロニー(写真3)では183組で、昨シーズンより35組、24%の大幅な増加でした。また、燕崎崖上の新コロニーでは、昨シーズンより1組減って、10組でした。

▲写真1:燕崎斜面の従来コロニー(2014年11月27日)
中央に水と土砂を流す排水路があり、その右奥が西地区で、左手前側が東地区。生育している植物は主にチガヤとシバで、これらは急斜面にある営巣地を安定させるために人為的に移植された。そのほかにイソギクやラセイタソウ、マルバアキグミが生えている。


▲写真2:従来コロニー西地区(2014年12月5日)
巣がかなり密集している。全体に白い成鳥の割合が高い。


▲写真3:北西斜面の新コロニー(2014年12月7日) 
2004年秋に4組が産卵してから10年で、つがい数は183組に急増した。これは従来コロニーから巣立った若い個体が、混雑して従来コロニーを避けて、新コロニーに移入しているためで、ここには黒っぽい色をした若い鳥が多い。

 

鳥島全体でカウントされた平均個体数は約1082羽で、昨シーズンより約102羽増え、増加率は約10%でした。それぞれの区域でカウントした平均個体数は、燕崎斜面で723羽(昨年比+37羽、+5%)、北西斜面319羽(+51羽、+19%)、燕崎崖上では31羽(+6羽、+23%)でした。また、今シーズンのカウント最小数は1042羽で、鳥島では毎日1000羽以上が観察されました。

燕崎の崖上には火山灰が堆積した平らな場所が広がり、そこにハチジョウススキやイソギク、ラセイタソウがごく疎らに生育しています。そして、それらのわずかな草むらの中や側でオキノタユウが営巣しています(写真4)。この場所は強風の影響(砂嵐)を受けやすく、これまで繁殖つがい数や繁殖成功率が大きく変動しました。今シーズン、他の場所と異なり、この場所で繁殖つがい数が減少したのは、産卵期後半にあたる2014年11月6日に鳥島付近を通過した台風20号(中心気圧975hPa、最大風速毎秒30m)の影響を受けたからにちがいありません。

▲写真4:燕崎崖上の新コロニー(2014年11月23日) 
平らで広い場所に植生がごく疎らに生育していて、それらの草むらの中や側にオキノタユウが営巣している。ここはオキノタユウの営巣に適さない。

 

繁殖状況の評価と今後の予測

鳥島全体での繁殖つがい数は、予測した650組よりかなりに多い、681組でした。結局、昨シーズンと今シーズンの2年間で、つがい数は143組、26%も増加しました。ぼくは3年間で約150組の増加と見込んでいたので、この急激な増加に驚きました。

もし今シーズンの繁殖成功率が最近5年間の平均68.5%程度であれば、2015年5月に約465〜470羽のひなが巣立つと期待されます。そして、鳥島集団の総個体数は約3890羽になるでしょう。

さらに、2009年から2011年に巣立ったひなが順調に成長して繁殖年齢に達すると仮定すれば、2015-16年繁殖期には約740組、2016-17年繁殖期には約800組、2017-18年繁殖期には850組以上のつがいが産卵すると予測されます。そして、3年後の2018年5月には鳥島集団の総個体数が5000羽に達すると予想されます。

「5000羽到達」は、鳥島集団が1000羽を超えた1999年以来、ぼくが掲げてきた大きな目標です。これを確実にするため、今年の4月から6月に、従来コロニー保全管理の補完作業を行なう予定です。

▲36歳のオキノタユウ(2014年12月5日) 
白い足環(白029)をつけた個体(左)は1979年5月に巣立った。少なくとも最近3年間、この鳥の繁殖は観察されなかった。


長谷川博
OWS会長
東邦大学名誉教授
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