ミッドウェー環礁の生きものたち
ミッドウェー環礁は、海鳥や渡り鳥、そして海洋生物にとって、平和なオアシスとなっています。17種類、数にして200万羽の海鳥が巣作りのために毎年環礁に飛来します。
11月から7月にかけてミッドウェー環礁はアホウドリの仲間で活気づきます。特にコアホウドリとクロアシアホウドリのコロニーとしては世界最大の場所となっています。また、金色の美しい頭のために“ゴールデングーニーズ”としても知られるアホウドリが数羽生息しています。
アカオネッタイチョウ、シロアジサシ、ヒメクロアジサシとクロアジサシ、オナガミズナギドリとシロハラミズナギドリたちも観察することができます。
イースタン島では、アカアシカツオドリやアオツラカツオドリ、オオグンカンドリ、セグロアジサシ、コミズナギドリなどを観察することができます。
ミッドウェー環礁に飛来する渡り鳥の中には、北国にある繁殖地が雪で覆われてしまうため、秋から冬にかけてやって来るものがいます。このような渡り鳥であるムナグロ、ハリモモチュウシャクシギ、メリケンキアシシギ、キョウジョシギなどが、草地や浜辺、道路上を飛び回っている姿がよく見られます。
ミッドウェー環礁の海は生命で満ち溢れています。およそ250頭のハシナガイルカが紺碧色のラグーンを泳ぎ回り、絶滅危惧種のアオウミガメはラグーンで餌を追い白砂の浜辺で体を休め、およそ60頭の絶滅寸前のハワイアンモンクアザラシが浜辺で日光浴をしいています。数多くのカラフルな熱帯魚など250種以上の魚がラグーン内を、リーフの外側ではマグロ、カジキなどの遠洋魚が青く澄んだ海を泳いでいます。
コアホウドリ
コアホウドリは、482,900つがい生息しており(世界の生息数の75%)、この環礁で最も有名な住人です。
アホウドリの仲間では小型の部類に入りますが、成鳥は体重3.15キロ、両翼を広げたときの長さは2メートルにもなります。
この鳥はたいへん長寿でもあり、ミッドウェーで最高齢のコアホウドリは60才(2011年現在)と推定されています。生涯をつがいで過ごし、毎年同じ場所に戻って巣を作り、卵を一つだけ産んでひなを育てます。
毎年最初のコアホウドリが10月下旬から11月上旬の間にミッドウェーに飛来し、12月中旬までに卵を産みます。
ひなは1月下旬から2月上旬には孵化し、巣立つのは7月頃です。巣立ちしたばかりのひなはその後5年間をミッドウェーの西から北西の海で過ごし、やがて島に戻ってきます。
クロアシアホウドリ
クロアシアホウドリは、通常ミッドウェー環礁の海岸近くの草地で見かけることができ、その数はおよそ28,600つがいです。これは世界の生息数の30%にあたり、最大のコロニーとされています。
クロアシアホウドリはコアホウドリよりやや大きくずんぐりしており、黒みがかった茶色をしています。
毎年ミッドウェー環礁には、コアホウドリより約2週間早く戻ってきます。この鳥が、体を前に突き出し頭は地面に対して水平に動かしながら歩く様子は決して優美とは言えませんが一見の価値があります。
アホウドリ
ここ数年、伊豆諸島・鳥島生まれのアホウドリが4~5羽、ミッドウェー環礁にやって来るようになりました。
写真はデコイ(模型)のつがいの間で求愛ダンスを踊るアホウドリ。
2010年11月16日には、イースタン島で鳥島育ちのアホウドリの産卵が確認され、1月には無事孵化が確認されました。
アホウドリは頭の金色の羽毛が特徴的で、コアホウドリやクロアシアホウドリよりも体が大きく、大きなピンク色のくちばしをしています。
ミズナギドリの仲間
シロハラミズナギドリは夜行性の鳥で、日が沈むと頭上を舞い始め、夕闇が訪れると地面に舞い降りてきます。砂に長さ2.7メートル、深さ90センチもの穴を掘って巣を作ります。彼らの巣を壊さないように遊歩道以外の道は歩行禁止となっています。
ミッドウェーに棲む32,000つがいのシロハラミズナギドリは、8月になると島に戻って巣穴を掘り始め、巣穴を拡げたり繕ったりします。メスは1月下旬から2月上旬に一つだけ卵を産みます。つがいは生涯を共に過ごし、毎年たいてい同じ穴に戻って来ます。
オナガミズナギドリは夜、嘆くような鳴き声で哀歌を歌います。求愛のためと巣穴を守る縄張り行動でもあります。およそ1,000つがいが3月下旬にミッドウェーに戻り、前年と同じ浅い巣穴で暮らします。
他の海鳥と同じように、オナガミズナギドリもつがいは生涯を共に暮らします。ハワイ諸島で確認されているこの鳥の最長寿記録は、29才です。
コミズナギドリは、わずか170つがいがイースタン島を棲み処にしています。
チョコレート色の鳥で、オナガミズナギドリに似ていますが体はこれより小さく、また同じように夜行性です。しかし棲み処は巣穴ではなく、草木が密集したところに小枝や木の葉で簡単な巣を作ります。
ネッタイチョウの仲間
アカオネッタイチョウが赤く長い尾を前後に動かしながら飛ぶのは、アクロバティックな求愛行動です。また、空を羽ばたくときの優美な姿に似合わず、甲高い叫び声のような鳴き声をしています。
ミッドウェー環礁はハワイ諸島の中でも最大のアカオネッタイチョウのコロニーで、その数はおよそ5,000つがいです。毎年2月から8月の間はここを棲み処にし、巣は草木の根元に作るのがふつうです。脚は極端に短く、しかも体の後ろの方についているので、歩くのは得意ではありません。
アカオネッタイチョウと近い親戚関係にあるのがシラオネッタイチョウで、体は小さくて細く、くちばしは赤ではなく黄色です。6羽ほどのつがいがミッドウェーで確認されており、北西ハワイ諸島では唯一の棲み処となっています。
カツオドリの仲間
アカアシカツオドリは、全身が白く翼の先端だけが黒で、青いくちばしと鮮やかな赤い脚を持っています。サンド島の上空を飛んでいるのを見かけますが、560羽のつがいはイースタン島だけに棲み処を作ります。他のカツオドリと違って巣は地面に作らず、ヘリオトロープやナウパカなどの灌木の枝に作ります。
アオツラカツオドリは少数ですが、イースタン島に巣を作り地面に卵を産みます。アカアシカツオドリとの違いは、黒い尾、黄色のくちばし、浅黒い脚、灰色がかった黒か青い顔などです。
カツオドリもミッドウェー環礁で見かけることができますが、棲み処はわずかに1ヶ所で見つかっているだけです。
オオグンカンドリ
イースタン島でアカアシカツオドリの巣の間に点在しているのが、およそ87つがい生息しているオオグンカンドリの巣です。この大型の鳥は両翼を広げた長さが2.3メートルあり、サンド島、イースタン島の上空を頻繁に飛び回っています。オスが求愛行動をする際には、くちばしの下にある赤いのど袋を膨らませます。
他の多くの海鳥と同じように卵を一つだけ産みますが、親鳥(通常はメス)はひなが巣立ちした後も18ヶ月目までは餌を与え続けます。また、特に若いオオグンカンドリは、アカオネッタイチョウとアカアシカツオドリから餌を盗むことがあります。この様子は、日暮れ時にサンド島の上空で見ることができます。
アジサシの仲間
セグロアジサシは、イースタン島とスピット島に45,000つがいが営巣します。中でもイースタン島の滑走路はセグロアジサシが好んで巣を作る場所です。
卵は地面に一つだけ産み、人間の気配には神経質なので、巣作りにあたる時期になると人の移動ルートが変更されます。
ナンヨウマミジロアジサシは、セグロアジサシよりわずかに小さいものの似たような模様をしており、羽毛は黒ではなく灰色をしています。
400つがいが生息しており、セグロアジサシのコロニーの外れで、地面の小さなくぼみに一つだけ卵を産みます。
セグロアジサシと同じように、この鳥もイースタン島とスピット島だけに巣を作ります。
こげ茶色をしたクロアジサシは、頭は灰色がかった白で、体はセグロアジサシよりもやや大きくずんぐりしています。およそ1,000羽のつがいがミッドウェーを棲み処にしており、たいていは茂みの近くの地面に一つだけ卵を産みます。
ヒメクロアジサシはクロアジサシよりも小さく、体の色はさらに濃い黒で、頭には明るい白の帽子をかぶっています。巣を作るのはサンド島のモクマオウで、11月から翌8月までの長い繁殖期間中に見かけることができます。
およそ6,000羽のつがいが保護区内で確認されており、北西ハワイ諸島中で最大のコロニーとなっています。
シロアジサシは、外来植物である鉄樹が持ち込まれたことにより恩恵を受けた数少ない種のうちの一つで、この木が多くの棲み処を提供しています。
シロアジサシは巣を作らず、木のまたやくぼみに卵を一つ産みます。また軒下やエアコンの上など人の生活圏でも平気で産卵します。
およそ7,500羽のつがいがミッドウェーを棲み処にしており、ハワイ諸島で最大のコロニーを形成しており、ほぼ一年中その姿を見ることができます。
渡り鳥たち
北極圏での巣作りの季節が終わると、海辺の鳥たちの多くはミッドウェーで“休暇”をとり、雪に閉ざされた冬から逃避します。中には、ミッドウェーで数日過ごした後にさらに温暖な気候帯に向かう鳥たちもいますが、多くは数ヶ月の間、棲みつきます。
よく見かける種はハリモモチュウシャクシギ、キョウジョシギ、メリケンキアシシギ、ムナグロなどです。
外来の鳥たち
ミッドウェーの亜熱帯性気候は、在来種の鳥たちに適しているだけではなく、2種類の外来の鳥にも適した環境となっています。
1910年にペットとして持ちこまれた12羽のカナリアは、その後野生化し、現在では500羽に増えています。
インドの在来種であるカバイロハッカは、1971年頃ミッドウェーに持ち込まれたそうです。現在では約800羽が生息していると見られています。
ハワイアンモンクアザラシ
ミッドウェー環礁で唯一の在来哺乳動物は、絶滅危惧種のハワイアンモンクアザラシです。1,500万年もの間その姿がほとんど変化していないことより、“生きた化石”と言われています。現在約60頭がミッドウェーに生息しており、ほぼ一年中見かけられます。
出産は一年を通じて行われますが、通常は2月から6月頃までがシーズンです。産んだ後も母親は5~6週間は子どもの傍らを離れずにエサを与えます。その間に子どもの体重は3倍に増えますが、母親の方は130キロも減ってしまいます。母親が子どもから離れると、子どもは自分で泳ぎとエサの捕り方を覚え、6ヵ月も経つと、自分の体重を維持するのに必要なだけのエサを食べるようになります。
アオウミガメ
ミッドウェー環礁のラグーンは、絶滅が心配されるアオウミガメにとっては重要なエサを確保する場所であり、サンド島の湾内でもよく見かけられます。
また、浜辺で日光浴をしている姿も見ることができます。
ハワインアンハシナガイルカ
およそ250頭のハワイアンハシナガイルカは、日中ラグーンの浅い海に現れ、夜には環礁の外にエサを採りに出かけます。本来、日が出ている間は休んでいるものですが、特に訪問者のボートがラグーン内にやって来たときなどは、海上をジャンプしたり回転したり活発に動き回ります。
ハシナガイルカは、1972年に施行された海棲哺乳類保護法により保護されています。
多様な魚たち
ミッドウェー環礁には250種以上の魚たちが棲んでいます。エンゼルフィッシュ、ベラ、チョウチョウウオ、クロハギ、ハギ、スズメダイなど魚たちの群れが、どこまでも続いている様子が見られます。
中にはハワイ本島ではめったに見ることができない魚も、ここミッドウェー環礁には生息しています。 ラグーン内では、ロウニンアジ、カスミアジ、オニイトマキエイ、メジロザメなどが見られます。