第2回報告 アホウドリ繁殖状況

第106回(2011年4月)鳥島アホウドリ調査報告
310羽のひなが巣立ち、鳥島集団の総個体数は推定で約2,755羽に

■テキスト&写真:長谷川博(OWS会長・東邦大学理学部)

2011年4月7日から4月29日まで鳥島に滞在し、アホウドリ(オキノタユウ)の繁殖状況の調査を行ないました。その概要を報告します。

2010年11月下旬から12月初旬に産卵数を調査し、2011年4月下旬にすべてのひなに足環標識を装着して、巣立ちひな数を確定しました(下表)。

【表】2010-11年繁殖期の産卵数、巣立ちひな数、繁殖成功率

区域
産卵数
巣立ちひな数
繁殖成功率
従来コロニー 燕崎斜面
396
253
63.9%
新コロニー 燕崎崖上
6
1
16.7%
北西斜面
79
56
70.9%
鳥島全体
481
310
64.4%

繁殖成功率は、昨シーズンと比較して鳥島全体で8.9%低下して64.4%でした。とくに従来コロニーで8.6%、燕崎崖上の新コロニーでは54.7%も下がりました。
北西斜面の新コロニーでも8%下がりましたが、それでも70%以上を維持しているので、とくに問題はありません。

その結果、巣立ったひなの数は、前年より17羽減少して、合計310羽でした(この他に15羽のひなが鳥島から小笠原諸島聟島に運ばれ、野外飼育され、すべて巣立ちました。したがって、鳥島産のひなは合計325羽となる)。

従来コロニーで繁殖成功率が低下した原因は、2010年2月に発生し、西地区東側の下部に流れ込んだ泥流だと考えられます。2010年5〜6月に中央排水路を掘削し、その排水機能を回復し、従来コロニーへの泥流の流入を防止する工事が行なわれました。しかしその時、泥流が流れた区域にチガヤを植える工事は行なわれず、その区域は火山砂によって覆われたままで、急傾斜(22〜23度)になっている地面は非常に不安定で、砂の移動が激しく、卵や孵化直後の小さいひなの死亡事故が増加したと推測されます。

また、燕崎崖上は平坦ではあるものの、そこにはハチジョウススキやラセイタソウ、イソギクなどの植物が疎らに生えているだけで、そこで営巣するつがいは強風や突風の影響を受けやすいといえます。今シーズンは、おそらく南西からの強風が吹き込み、砂混じりの突風が発生して、事故死が増加したのだろうと推測されます。

それでも、3年つづけて300羽以上のひなが巣立ち(3年間の合計943羽、小笠原諸島に運ばれた個体を含めれば988羽)、鳥島集団の繁殖状況は順調だといえます。

これら310羽の幼鳥に加えて、1〜6歳の若鳥が推定で1,268羽、7歳以上の成鳥が1,178羽、鳥島集団の推定総個体数は約2,755羽となりました。昨年の同時期より185羽の増加です。

長谷川博
OWS会長
東邦大学名誉教授
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