第10回報告 オキノタユウの繁殖状況
第117回(2015年4月)鳥島オキノタユウ調査報告
479羽のひなが巣立ち、鳥島集団の総個体数は推定で約3,900羽に
■テキスト&写真:長谷川博(OWS会長・東邦大学名誉教授)
2015年3月25日に八丈島を出帆し、26日に鳥島に到着・上陸、5月3日まで39日間にわたって滞在し、オキノタユウ(学名Phoebastria albatrus, 別名アホウドリ。ぼくは39年間にわたってこの鳥とつきあってきて、もう“アホウドリ”とは呼びたくなくなり、オキノタユウと呼ぶことにしました)の繁殖状況の調査を行ないました。その結果の概要を報告します。
1. 2014-15年繁殖期の巣立ちひな数と繁殖成功率
2014年11月下旬から12月初旬に産卵数を調査し(第9回報告を参照)、今回、ひなに足環標識を装着して、巣立ちひな数を確定しました(下表)。
【表】2014-15年繁殖期の産卵数、巣立ちひな数、繁殖成功率
区域 |
産卵数 |
ひな数 |
昨年比 | 繁殖成功率 |
昨年比 | |
従来コロニー | 燕崎斜面 | 488 |
323 |
+24 | 66.2% |
−0.2 |
新コロニー | 燕崎崖上 | 10 |
5 |
+1 | 50.0% |
+13.6 |
北西斜面 | 183 |
151 |
+54 | 82.5% |
+17.0 | |
鳥島全体 |
681 |
479 |
+79 | 70.3% |
+4.6 |
燕崎斜面の従来コロニーでは323羽のひなが巣立ち、繁殖成功率は昨シーズンとほぼ同じの66.2%でした。北西斜面の新コロニーからは、昨シーズンより54羽も多い151羽のひなが巣立ち、繁殖成功率は大幅に改善して82.5%でした。鳥島全体では、昨シーズンより79羽も多い479羽のひなが巣立ち、繁殖成功率は70.3%でした。今シーズンは「穏やかな冬」だったため、繁殖成功率は一昨シーズンの水準にもどりました。
▲写真1:燕崎斜面の従来コロニー(2015年4月25日) |
▲写真2:燕崎崖上の新コロニー(2015年4月23日) |
▲写真3:北西斜面の新コロニー(2015年4月18日) |
これら479羽の幼鳥に加えて、1〜6歳の若い鳥が推定で1,755羽、7歳以上の成鳥が1,668羽で、それらを合わせた繁殖期直後の鳥島集団の総個体数は約3,900羽となりました。昨年より約360羽の増加です。鳥島集団はきわめて順調に個体数を回復しています。
2. 来シーズン以降の予測
オキノタユウの集団生物学的特性と単純な集団モデルから、来シーズン(2015-16年繁殖期)は約740組のつがいが産卵すると予測されます。おそらく、燕崎斜面の従来コロニーで約500組、燕崎崖上の新コロニーで約10組、北西斜面の新コロニーで約230組が産卵するでしょう。そして、鳥島全体の繁殖成功率が約70%に維持されるとすると、2016年5月には515〜520羽のひなが巣立つと期待されます。そして、鳥島集団の総個体数はおよそ4,250羽になるでしょう。
さらに、2016-17年繁殖期には約800組のつがいが産卵し、約560羽のひなが巣立ち、総個体数は約4,600羽になり、2017-18年繁殖期には約855組が産卵、約600羽が巣立ち、約5,000羽になると予測されます。ぼくが目標としてきた「5,000羽」に到達するまで、あと3年になりました。
▲写真4:求愛ダンスをするつがい(2014年4月19日) |