第4回報告 アホウドリ繁殖状況

第108回(2012年4月)鳥島アホウドリ調査報告
353羽のひなが巣立ち、鳥島集団の総個体数は推定で約3,000羽に

■テキスト&写真:長谷川博(OWS会長・東邦大学理学部)

2012年4月9日から4月30日まで鳥島に滞在し、アホウドリ(オキノタユウ)の繁殖状況の調査を行ないました。その概要を報告します。

1. 2011-12年繁殖期の巣立ちひな数

2011年11月下旬から12月初旬に産卵数を調査し、2012年4月下旬にすべてのひなに足環標識を装着して、巣立ちひな数を確定しました(下表)。

【表】2011-12年繁殖期の産卵数、巣立ちひな数、繁殖成功率

 
従来コロニー
新コロニー
鳥島全体
燕崎斜面
燕崎崖上
北西斜面
産卵数
403
7
102
512
巣立ちひな数(羽)
275
6
72
353
繁殖成功率
68.2%
85.7%
70.6%
68.9%
昨年比
+4.5%
+69.0%
−0.3%
+4.5%

繁殖成功率は、昨シーズンと比較して、鳥島全体で4.5%上がって68.9%でした。とくに、燕崎崖上の新コロニーでは69%も上がり、北西斜面の新コロニーでは昨年と同程度でした。 
  その結果、巣立ったひなの数は、前年より43羽も増加して、合計353羽でした(この他に15羽のひなが鳥島から小笠原諸島聟島に運ばれ、野外飼育され、14羽が巣立ちました。したがって、鳥島生まれのひなは合計367羽となる)。


従来コロニーのひなと成鳥、若鳥

これら353羽の幼鳥に加えて、1〜6歳の若鳥が推定で1,394羽、7歳以上の成鳥が1,254羽、それらを合わせた繁殖期直後の鳥島集団の総個体数は推定で約3,000羽となりました。昨年の同時期より約245羽の増加です。

2. 来シーズン以降の予測

繁殖集団の単純な数のモデルによると、来シーズン(2012-13年繁殖期)には約550組のつがいが産卵すると予測されます。おそらく、燕崎斜面の従来コロニーで410〜415組、燕崎崖上の新コロニーで7〜8組、北西斜面の新コロニーで約130組が産卵するでしょう。そして、繁殖成功率が最近5年間の平均程度に維持されるとすると、来シーズンはひなが小笠原諸島聟島に運ばれないので、390〜400羽のひなが巣立つと推測されます。
さらに、2013-14年期には約590組のつがいが約420羽のひなを育て、つぎの2014-15年期には640組が450羽を、2015-16年期には700組が490羽を育て、2016年6月には鳥島集団の総個体数が約4,000羽に達するでしょう。


▲求愛ダンスをする成鳥(右)と若鳥。右後方はひな


コロニー上空を飛ぶ成鳥
長谷川博
OWS会長
東邦大学名誉教授
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